わだちの軌跡(4)

4.「わだち」のような働き場が必要

働くことを通して社会性が身につくことを肌で感じている。
まず、データ入力は主婦や学生をバイトとして雇ってその人たちにやって貰う。障害のある人たちはその人たちの管理をする。「管理する」といっても如何にしてバイトに心地よく円滑に仕事をさせる環境を作っていくかが仕事である。そこではバイトを「気遣う」ことも必要だし、「如何に円滑に仕事をさせるか」ということも考える必要がある。そういった力を養える。
一方、システム開発業務やコンサル業務では自分で勉強しないと仕事自体ができない。特にコンサル業務は法律・条例・制度といった類いを熟知し、年々変わる情報に敏感になり、あるいは自治体の状況も知らないといけない。システム開発業務も日々アップデートされる情報や技術を学ぶ必要がある。
さらに、顧客との打ち合わせや見積書の作成なども障害のある人たち自らやっている。現に友人は顧客との打ち合わせで鍛えられて、今は人材派遣会社でバリバリ働いている。
そのほか、給与査定も自分たちでやるなど障害のある人たち自身の手で運営してきている。
こういった経験は私生活において応用が利く。まず、バイトを使って仕事をすることは介助者を使って生活していくことに応用が利く。コンサルやわだちの運営などで身につけたノウハウは、行政と交渉するときやイベントなどを企画するときに役に立つ。
私自身、「人への気遣い」や「人への頼み方」を身につけ、私生活でも生かしている。さらに、コンサル業務で培ったノウハウはよくする会や車いすセンターの活動に役に立った。現在、都市計画コンサル会社に就職して身につけたノウハウが活かされている。
これらのことは「働く」を通じて、自らを成長させる機会に繋がることを意味している。さらには、社会性が身に付く。こういう点で、特に生まれつき障害のある人たちには「働く」ことが重要であると思う。
一方、多くの人たちは自立生活センターを作って、地域生活する障害のある人たちを増やそうとしている。この自立生活センターでやっている自立生活プログラムやピア・カウンセリングは、自身の成長には繋がるけれど、社会性は身につかない。
しかも、昨今の特別支援学校や大学を出たばかりの人たちを見ていると「一人暮らし」より「まずは、働いて稼ぐ」ことが先に来る人たちが多い傾向にあると肌で感じている。
従って、「ある程度稼げ」かつ「社会性が身に付く」働く場が必要だと思う。

つづく

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