多機能トイレ

国土交通省がこの間、障害のある人たちの声を聞いて、多機能トイレからオストメイト設備と乳幼児設備を男女別トイレに分散させ、さらに2021年のバリアフリー法の改正で高齢者障害者等用施設である便房(バリアフリートイレ)の適正利用の推進が規定されている。

確かに多機能トイレに大人用ベッドの設置については評価すべきである。街がバリアフリーになればなるほど「重症心身障害」といわれる身体も知的も重度障害である人たちが親ないしは介助者と街に出かけるようになって「大人用ベッド」のニーズが増してきたので、評価できる。

ただ、機能分散と適正利用の推進に関しては大いに疑問である。多機能トイレを必要としている人は車いす使用者と高齢者だけだろうか?1990年代に福祉のまちづくりに類する条例やハートビル法で車いすトイレが明記され、その後、乳幼児設備を設けたことで爆発的に増えた。オストメイト設備を設けたことで人工肛門をつけた人たちが便利になり、さらに、男女別トイレから独立した場所にあることで、トランスジェンダーや車いす使用者以外の異性に介助される人たちが使うようになっていった。こうして今や必要とされる人たちが増えたのである。この事実を車いす使用者たちは理解すべきである。ただ、自分たちの主張だけではいけなく、状況やいろいろな人の存在を把握した上で考えることが重要である。

なお、名古屋市交通局では2000年の名城線が砂田橋駅まで延伸したときから多機能トイレが2つ設置されるようになった。当初は男女別トイレの中に1カ所ずつであったが、2003年頃からは男女別トイレの手前に多機能トイレが2カ所。しかも右利き用左利き用を採用している。それ以降、新駅やバリアフリー改修で2013年に地下鉄全駅エレベーター・多機能トイレの設置が完了している。この時点で桜通線・中村区役所駅~野並駅以外の駅には多機能トイレが2カ所設置されている。さらに、2019年から駅構内のトイレリニューアルが順次進められている。それに伴い、男女別トイレの中に1カ所ずつ車いす使用者が使えるブースが設けられるようになった。

また、最近の商業施設も充実している。多機能トイレが独立した場所に1カ所設けられ、男女別トイレの中に1カ所ずつ車いす使用者の使えるブースが設けられている。そのようなトイレがワンフロアに1カ所以上ずつ設けられている。

名古屋市交通局も商業施設も一歩先を行っている。国が示している「適正利用の推進」・「利用分散」は効果的でなく、多機能トイレの数を増やすことが重要である。さらに、大人用ベッドを設置した多機能トイレを増やすべきである。ただ、大人用ベッドが乳幼児用ベッドを兼ねるかは調査・研究・議論が必要である。

バリアフリーアナリスト

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